難聴によってリスクが高まる病気がある

 

 聞こえが悪くなると、まわりとのコミュニケーションがとりづらくなるだけではありません。

 

 話が通じないと口数が少なくなり、自分の世界にこもるようになります。

 

 すると、何ごとにも無気力になり、うつのような症状を示すことも少なくないのです。

 

 また、聞こえづらいと、脳への刺激も薄れます。

 

 すると、子どもだったら発達障害、高齢であれば認知症になるリスクも高くなるのです。

 

 非常に多くの人が、聞こえるようになったら、

 「気持ちが明るくなった」

 

 「積極的になった」

 

 「よくしゃべるようになった」

 

 「外にでかけるようになった」

 

 といいます。

 

 ある95歳のおばあちゃんは、聞こえがどんどん悪くなり、家族ともほとんど話をしなくなりました。

 

 「もう年だから、何をやってもムダ」とあきらめて、1日中、テレビの前に座って、ぼんやりするようになってしまったそうです。

 

 ところが、お孫さんがお誕生日に補聴器をプレゼントしてくれたので、試しにつけてみました。

 

 すると、思った以上によく聞こえたのだそうです。

 

 そこで、「聞こえると楽しい」ということを実感したおばあちゃんは、娘さんに頼んで、さまざまな治療法を探すようになりました。

 

 そして、私の治療院に通うようになったのです。

 

 このおばあちゃんは、耳の治療をしていくうちに、どんどん欲が出てきて、「耳だけでなく体も元気でいたい」と思うようになったといいます。

 

 そして、公園を散歩して、話し相手を見つけたり、ストレッチ教室に通ったりするようになって、以前よりぐっと元気になったそうです。

 

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潜在的な難聴の数はおよそ2000万人?

 

 耳にトラブルを抱える人の数は、皆さんが考えるより、はるかに多いと私は思っています。

 

 5年ごとに行われる厚生労働省の調査では、平成23年度の聴覚障害者数は、65歳未満で6万6800人、65歳以上で17万5400人、合計で、24万2200人となっています。

 

 ですがこの数字は、実際に耳のトラブルに悩む人の、ほんの一部の数でしかありません。

 

 実は、日本以外の基準に従い、40?以下の音が聞き取れない人も難聴と定義するなら、2000万人を超えるともいわれているのです。

 

 2000万人がどれくらいの数か、想像もつかないという人のために、例をあげてみましょう。

 

 中高年になると気になる、生活習慣病のひとつに、血液中のコレステロールや中性脂肪が増える、高脂血症があります。

 

 皆さんのまわりでも「検査でコレステロール値が悪かった」「中性脂肪が多かった」といった人の話をよく聞くかと思います。

 

 この高脂血症の患者数は、日本全国で推定2000万人といわれています。

 

 また、肥満者や若者にも増えつつある、糖尿病。

 

 よく耳にする病気のひとつですが、糖尿病の可能性が高い患者と、糖尿病の可能性を否定できない人の数が、あわせておよそ2000万人と推測されています。

 

 こうして身近にある、病気と同じくらいの患者数がいると予測されるのが、難聴なのです。

 

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子どもの難聴も急増している

 

 また、難聴は決して「お年寄りの病気」「年をとったからなるもの」ではありません。

 

 近年では、10代の若者や、もっと小さな子どもの患者も急増しています。

 

 ある日、私の治療院に、3歳の男の子が、お母さんに連れられてやってきました。

 

 それまでは、何の問題もなく聞こえていたのに、ある日を境に、呼んでも振り向かなくなったのです。

 

 「一時的なものかもしれない」と様子を見ていたのですが、回復する様子がないので、お母さんが病院に連れて行きました。

 

 病院での診断は、「先天性のものだから治らない」とのこと。

 

 「これまで聞こえていたのだから、そんなはずはない!」と思ったお母さんは、7つ以上の病院を巡りました。

 

 ところが、どこでも改善の見込みはないといわれてしまいます。

 

 途方に暮れて、最後に私の治療院に駆け込んできたのです。

 

 私が治療のベースにする、中医学では、体の不調には必ず原因があると考えます。

 

 聞こえていたものが聞こえなくなったのには、理由があるはずです。

 

 ただ、難聴の原因はひとつでないため、見極めるのが簡単ではありません。

 

 しかし、原因がたくさんあるということは、治療の方法もひとつではないということです。

 

 本書でも、難聴に効果があるエクササイズやマッサージを、後ほどご紹介しています。

 

 同じ方法をお母さんに教えたところ、

 

 「なにもしないよりは、やったほうがまし」

 

 そう考えたこのお母さんは、少しずつマッサージをしてあげたり、子どもと一緒にエクササイズしたりと、たくさんの方法を試し始めました。

 

 そして、1年半を過ぎるころには、この男の子の耳は、元どおりに聞こえるようになったのです。